手首・手指の腱鞘炎を引き起こす原因と可視総合光線療法
一般財団法人 光線研究所
研究員 佐藤 仁
骨と筋肉を繋いでいるひも状の腱を、所々で包み込むように骨に固定しているのが腱鞘です。この腱鞘の炎症が腱鞘炎です。腱や腱鞘は体の様々な部位にありますが、腱鞘炎は主に動きの多いで手首や指に発症します。原因は手指の使い過ぎと言われ手首や指先をよく使う職業の人に多く発症しますが、家事や育児でも起こりやすい症状です。
今回は手指に腱鞘炎を引き起こす原因と本症に対する可視総合光線療法の解説と症例を紹介します。
■手指腱鞘炎
手指が動く仕組みは、手指に直接筋肉が付いているわけではなく、手指の骨の表と裏側についている腱の働きです。腱は筋肉と骨を繋いでいるひも状の筋で筋肉が縮むと腱が引っ張られ指の骨を動かすことで指が動きます。
その腱の通り道を腱鞘です。腱鞘炎は、この腱鞘部分に炎症が起きている状態です。炎症で腱鞘部位が腫れて痛みを引き起こし、腱の動きも悪くなります。腱がひっかかって、指の関節がうまく伸びず、バネが弾けるような伸び方をする現象も起きます。これを「バネ指」とも呼びます。掌側(手の平側)に痛みが生じる場合多くは「バネ指」と言われています。
また、親指の付け根から手首にかけての腱鞘炎は、ドケルバン病(狭窄性腱鞘炎)とも言われ、この症状で困っている方も多くみられます。
■腱鞘炎の原因
原因は、手指の過使用と言われますが、同じように手を使っても腱鞘炎が起きない人もいます。また、よく使う利き手ではない方の手に発症する人も多く見られます。腱鞘炎の原因として過使用以外に、実は腱の軌道が悪いことも原因とされています。腱が腱鞘部分をまっすぐ動いていれば問題ありませんが、腱に力が係る方向(軌道)が曲がっていたりすると、腱と腱鞘との摩擦が増え炎症が起こりやすくなります。手指の腱の軌道が曲がる原因としては、手の使い方の問題や巻き肩(肩が内側に入り込んでいる状態)、腕や肘、手首のねじれなどがあります。ねじれがあると、手指を動かす腱に力が真っ直ぐかからず、腱の軌道が曲がってくるので炎症を起こしやすくなります。また、手指を動かす筋肉は上腕、胸、背中の筋肉につながっています。肩こりや巻肩があると胸や背中や上腕の筋肉がうまく使われず、手掌や手首付近の筋肉に負担がかかり、筋疲労を起こして腱鞘炎を引き起こしやすくなります。
■腱鞘炎改善
腱鞘炎の再発を繰り返したり、なかなか改善しない場合は、背中や肩甲骨周りの筋肉が緊張し固くなり、いわゆる肩こりが強くなっている場合が多い様です。肩こりが強いと巻き肩や腕や肘や手首のねじれを生じやすくなり、正しい方向から腱が引っ張られず炎症を発症しやすくなります。治りにくい腱鞘炎は、肩こりなども改善して、腱が正しい方向から引っ張られる状態にすることが大切になります。
また、肩こりを改善して、手や腕を使う時に、背中や上腕の筋肉もよく働く様にすることで、手や手首の負担が減り、腱鞘炎の改善や予防になります。
■光線治療
治療用カーボン:3001-4008番、3001-5000番、1000-3001番、1000-3002番など。
光線照射部位及び照射時間:両足裏部⑦10分間、両膝部②5分間、腰部⑥5分間、後頭部③(1号集光器使用)5分間。腱鞘炎で痛みがある部位に1号集光器又は2号集光器を使用して10~20分間照射。
※肩や背中のこりが強い場合、背中上部(集光器使用せず)や左右頚部(1号集光機器使用)各5~10分間適宜追加。
光線研究 第642号 令和6年2月1日発行 (一般財団法人 光線研究所)