肝臓病 1
肝臓病とは、肝臓に障害が起こる病気の総称で、肝炎、肝硬変、肝臓がんなどがあり、特に多いのがウイルスによる肝炎です。
ウィルスによる肝臓害
ウィルスによる主な肝炎には、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎があります。
1)A型肝炎
A型肝炎は、A型肝炎ウィルスに汚染された飲食物を摂取することによって発症します。わが国では生貝の摂取が感染源となった例もありますが、海外旅行や海外出張などで感染することも多いようです。この肝炎は、慢性になることはほとんどなく、治癒します。
2)B型肝炎
B型肝炎は、主に輸血の際にB型肝炎ウィルスが体内に入って発症します。しかし、現在では献血時に血液チェックがされ、消毒法など感染防止対策が徹底されたため、輸血後のB型肝炎の発生はほとんどなくなっています。
B型肝炎は、成人では急性肝炎(一過性肝炎)として発症したときは、慢性化することなく、ほとんど治癒します。しかし、なんらかの原因で免疫の働きが低下している場合、例えば血液透析患者や白血病患者などでは、一度感染するとウィルスはそのまま体内に残ってしまう(持続感染)ことがあります。
3)C型肝炎
C型肝炎は、C型肝炎ウィルスの感染によって発症し、B型肝炎と同様に血液を介して感染します。この肝炎はB型肝炎と異なり自然治癒傾向は極めて少なく、持続肝炎の状態になりやすい傾向があります。慢性肝炎になって5~30年の経過の中で肝硬変症、肝臓ガンに進展します。感染から肝臓ガンになるまでの期間を検討した研究では、B型肝炎45~60年かかるのに対して、C型肝炎では13~27年とその期間はC型肝炎がはるかに短いことを示しています。治癒にはインターフェロンが使われます。
急性肝炎の症状は、各型の肝炎では程度の差はありますが、発熱、全身倦怠感、悪心、嘔吐、食欲不振、腹痛、下痢、掻痒感などがみられます。
C型肝炎ウイルスは血液や体液を介して感染します。C型肝炎ウイルス感染の危険性がある行為に、以下のようなもののがあります。
・注射器の使い回し(覚せい剤注射時など)
・ウィルスに汚染された器具の使用(カミソリの共用、鍼はり、刺青、ピアスの装着など)
母子感染や性交渉による感染は、感染率は低いと考えられています。
薬剤よる肝障害
年々開発される薬剤の数は増加し、その副作用による肝障害にも増加傾向にあります。
薬剤に肝障害は、薬剤の量が多すぎたり、薬剤に対してアレルギーがあったりすると生じます。
肝障害の慢性化は、主にウィルス性肝炎、特にB型肝炎の一部とC型肝炎によって起こりますが、このほかにアルコール性、薬剤性の肝障害も一部慢性化します。B型およびC型肝炎ウィルスの持続感染状態をキャリア(保菌者)と呼んでいますが、慢性化する例は、このキャリアからの発症と考えられています。キャリアの中で肝障害を全く示さない場合を健康キャリアと呼んでいます。
キャリアの問題が重視される理由は、慢性化しやすいことと感染源になることが多いからです。母子感染は感染率は低いものの、大きな社会問題で、免疫反応が弱い乳幼児はキャリアになりやすいといわれています。
いろいろな原因による肝障害が慢性に経過したその終着駅が、いわゆる肝硬変です。肝硬変は、その名のとおり、線維成分の著しい増加のために肝臓が硬くなった状態をいいます。肝硬変になると、肝臓内の血液循環が悪くなり、そのため腹水、食道静脈瘤が生じたりしてきます。肝臓ガンができやすく、消化管出血、肝不全とともに肝硬変の三大死亡原因となっています。
肝硬変を、構造的に正常に戻すことは困難ですが、肝臓の働きという面ではかなり回復させることも可能です。一時的に黄疸や腹水がみられた状態でも、しばしが回復して、社会復帰できることがあります。
(財)光線研究所「可視総合光線療法・理論と治験」黒田一明著