上肢のしびれ
しびれは必ずしもしびれているところに原因があるわけではありません。しびれを伝える神経が興奮し、その情報が脳へ届き「しびれ」として認識されます。脳、脊髄、末梢神経、または血管の障害などが因子となりなります。上肢のしびれで多いのが、変形性頚椎症や頚椎ヘルニア、手根管症候群などによるものです。
●変形性頚椎症・頚椎ヘルニア
24個の椎骨が重なって形成される脊椎の内、頚7個の部分を頚椎といい、1個1個の頚椎の間に椎間板があります。椎間板には頚をスムーズに動かしたり、衝撃を和らげるクッションの働きがあります。脳からスタートした中枢神経は脊髄として脊椎(脊柱管)の中を通り、手や足、肋間へと枝を伸ばしています。この枝を末梢神経といい、頚椎からの枝は上肢(腕や手指)へと走行しています。頚椎の変形や椎間板が飛び出ることで、末梢神経の根の部分が刺激され上肢のしびれとなって現れます。最近とくに増えているといわれるストレートネックなども上肢のしびれを誘発する要因の一つです。
●手根管症候群
それぞれの頚椎の間から伸びた末梢神経は、手首のところの「手根管」を通過し指へと至ります。手根管とは、手首の部分にある骨と手根靭帯に囲まれた空間のことで、手首を曲げるための筋腱や正中神経が通ります。手の使い過ぎなどによって手根管内で正中神経が圧迫されることしびれを生じます。中年以降の女性に多く、糖尿病や甲状腺の異常、妊娠などが関係していると考えられています。治療法は一般的に、装具の着用、ステロイド注射、手術などがあります。
【治験例 1】
■変形性頚椎症
◆66歳/男性(身長163㎝、体重75kg)
◆症状の経過:退職後、ワープロを本格的に始めてから肩、頚の付け根、右肘の痛みと右手指のしびれや肩が上がらないなどの症状が現れた。変形性頚椎症と診断され、異常の一部は椎間板ヘルニアによる可能性もあり牽引治療を受けた。元同僚の紹介で光線研究所付属診療所を受診し光線治療を始めた。
◆光線治療:3001-4008番の治療用カーボンを使用し、両足裏部、両膝部、腰部、頚椎下部、右肩部、右後肘部各10分間、左右咽喉部各5分間照射。
◆治療経過:治療1ヵ月間で肩こりや肩と頚の痛みが和らぎ、2ヵ月間で肩や頚の締め付け感がなくなり、右肩や肘の動きもよくなった。3ヵ月後より右手指のしびれを感じることが減ってきた。眼の疲れの予防を含め光線治療を継続している。握力:右手16/左手30 →(3ヵ月後)右手32/左手35
【治験例 2】
■変形性頚椎症
◆57歳/女性
◆症状の経過:2ヵ月前より背中が硬くなり、頚から手先までしびれがみられた。特に左肩甲骨周辺の痛みが強く、変形性頚椎症と診断された。整形外科での治療では改善がみられず、また頑固な片頭痛(右側)もあった。
◆光線治療:3002-4008番の治療用カーボンを使用し、両足裏部15分間、両膝部、腰部、頚椎下部、左肩甲下部各10分間、左右下腹部、左後肘部、左肩部、左右咽喉部各5分間照射。
◆治療経過:初診時は左肩甲骨部や後頚部の筋肉が異常に盛り上がっていた。治療1週間前後で片頭痛は午後には楽になり、しびれも軽減した。1ヵ月で左肩甲骨部や後頚部の痛みは9割方改善し、片頭痛は完治した。3ヵ月目には背中の痛み、しびれは完治し、便秘、不眠もなくなり、硬かった筋肉も柔軟になった。。
握力:右手1/左手0 →(5ヵ月後)右手17/左手11
(財)光線研究所「可視総合光線療法・理論と治験」黒田一明著