炎症性腸疾患1
炎症性腸疾患の中で原因のはっきりしていないものに、潰瘍性大腸炎とクローン病があります。どちらも再発を繰り返すことが特徴で、これらの疾患は医療費公費負担疾病(難病)に指定されています。症状再発には、心理的、社会的因子の影響が大きいといわれています。過労を避け、可視総合光線治療により精神的な安定をはかることも必要です。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、主として大腸粘膜がびまん性(広範囲)に侵され、しばしばびらん(ただれ)や潰瘍を起こす病気です。原因不明の大腸の非特異性炎症と定義されており、厚生労働省特定疾患(難病)に指定されています。慢性の下痢、粘血便が主な症状ですが、病勢や罹患範囲によって下痢、血便の程度はさまざまです。発熱、貧血、栄養障害などの症状をともなう場合も少なくありませんが、軽症の場合や緩解期(症状が消えている期間)には、全身症状があまり現れない場合もあります。
病変は直腸に始まり、再発と緩解を繰り返しながら、広範囲に連続して上部へ向かって大腸に広がり、ひどいときには大腸全体に及びます。病気の経過は、再燃緩解型、慢性持続型といわれるものが多く、急性電撃型はまれですが、これは発熱、大量出血、穿孔(腸に孔があく)、中毒性結腸拡張などをともない重篤となります。
この病気は「潰瘍性」という名称がつけられていますが、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の潰瘍とは全く異なる疾患です。若年に発病するものが多いのですが、各年齢層にみられます。
潰瘍性大腸炎は、以前はわが国ではまれな疾患でしたが、食生活の欧米化によって、絶対数は少ないものの、急激な増加が注目されています。
この病気の原因として、古くから感染説、アレルギー説、自律神経障害説など諸説ありますが、今のところ原因は明らかになっていません。慢性関節リウマチのような自己免疫の関与を示唆する研究報告(自己免疫疾患説)も多く、自己の免疫機構に異常があって起こる可能性も考えられています。
潰瘍性大腸炎の大きな特徴に、合併症があります。腸管の合併症には、ガン化と中毒性巨大失調症があり、いずれも重篤な合併症です。腸管外の合併症は眼(光彩網様体炎)、皮膚(結節性紅斑)、関節(強直性脊椎炎)に炎症性の疾患が生じ、非常に治りが悪いという特徴があります。
(財)光線研究所「可視総合光線療法・理論と治験」黒田一明著