過労に対する可視総合光線療法 2
■疲労と各組織・臓器への負担に関する研究
(「疲労による健康障害の分子機構に基づく予防法の開発」より)
①疲労因子(リン酸化eⅠF2α)が生じると炎症性サイトカインが誘発されます。誘導される炎症性サイトカインは、肝臓におけるインターロイキンⅠβの産生が他の臓器に比して圧倒的に多いことが判明。疲労発生には、肝臓における疲労因子が主要な働きをしていると考えられた。
②抗酸化食品などで酸化ストレスを抑制すると、肝臓における疲労因子は抑制されるが、脳、心臓、腎臓、筋肉といった臓器・組織における疲労因子は抑制しないことが分かった。これは酸化ストレスの抑制は、生体アラームである疲労感だけを抑制し、疲労現象に伴う心身の消耗を見過ごすことになる可能性があることを意味している。
※サイトカイン:主に免疫細胞から分泌されるタンパク質で、細胞間の情報伝達を担う。
■ガンと疲労に関する研究(2017年日本の研究)
①強い疲労感を伴なうことが知られる多発性骨髄腫の疲労感の研究を行った。結果、免疫抑制が強くない患者(※1)において、唾液中のHHV-6、HHV-7(※2)再活性化量が、ガン関連疲労と有意に相関した。このことから、ガンの疲労が生理的疲労と同じメカニズムで示唆された。
②ガンのか化学療法に疲労を、乳ガン患者の化学療法前後で検討した。結果、疲労が強く誘導されることが知られるドキタキセル(抗ガン剤)を用いた治療において唾液中のHHV-6、HHV-7(※2)がドキタキセル治療で有意に高値を示した。この結果から、ガン化学療法の疲労も生理的疲労と同じメカニズムで生じていると考えられた。これらのことから、ガンやガン化学療法の疲労は回復できる生理的疲労で、予防法の開発により患者のQOL(生活の質)を上昇させるもの考えられた。
(※1)免疫抑制の強い(多量のステロイド剤を用いている)患者さんの場合、疲労感も抑制されやすくなる。
(※2)HHV-6、HHV-7は、乳児期に親より感染し、その後は体内に潜伏するヒトヘルペスウィルスの一種。疲労すると(=生理的疲労)活性化され唾液中に放出されると考えられている。
光線研究第639号 令和5年6月1日 一般財団法人 光線研究所発行