
疲労に対する可視総合光線療法 1
一般財団法人光線研究所
所長 医学博士 黒田一明
全国10万人調査から発表された「日本の疲労状2024」によると、日本人の7割以上が疲労を感じているといいます。光線療法は疲労回復に有効です。今回は、疲労に関する文献と、介護疲れによる疲労例、感染症による疲労例、副腎疲労症候群による疲労の光線治療3症例を紹介します。
■疲労
私たちが日々当たり前のように感じている疲労ですが、その原因は、精神的ストレスや身体的ストレス、睡眠障害や病気、感染など実に様々です。また、ストレスと疲労はよく混同されがちですが、ストレスは疲労の一因です。ストレッサー(心身にかかる外部からの刺激)よってストレス反応が生じます。このストレス反応が過度に重なることなどで、疲労状態になってしまいます。日本疲労学会による定義では、「疲労とは、過度の肉体および精神的活動、または疾病によって生じた心身の活動能力、能率の減退状態」とされています。
■可視総合光線療法の疲労回復を促す3作用
1つ目は、連続スペクトルの照射により不足した光・熱エネルギーを迅速に補給すると同時に、ミトコンドリア(ATP)や熱の産生を促します。2つ目は、光線に含まれる僅かな紫外線により産生されるビタミンDなどにより抗酸化作用が障害された細胞を修復、再生します。3つ目は、体内で産生されたビタミンDなどが疲労状態を各細胞に連絡する炎症物質であるサイトカインを減少させる。
疲労を感じた時の生体の初期反応は、交感神経の過緊張状態で、この状態が続くと神経系、ホルモン系、免疫系の働きが変調を来し最終的には病気に陥ることになります。光線療法は交感神経過緊張を緩和し、生体リズムを修正して体調を整え、疲労、だるさ、倦怠感などの症状を軽減します。
■ビタミンD欠乏と疲労(症例報告・米国の研究2015年)
疲労は漠然としておりよく見られる訴えで、医師も患者もその特徴をうまく把握していない。疲労は様々な病因から生じる可能性があるが、現時点では疲労を訴える各患者に対する包括的なアプローチには、血中ビタミンDレベルの定期的な測定は含まれていない。本症例では61歳男性の日中の過度な疲労を検討した。うつ病、睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシーの特徴的症状はなかった。実際、血中ビタミンDレベルは18.4ng/mlと低糖だっため、ビタミンDの補給(ビタミンD2を5万単位/週、8週間)を開始。血中ビタミンDレベルは投与3ヵ月後27.2ng/ml、12ヵ月後32.2ng/mlに増加。ビタミンD補給2週間以内に疲労感、日中の眠気が改善し、ビタミンD補給3ヵ月後に症状は完全に解消。3ヵ月後の診察では、以前の日常生活に戻っていた。ビタミンD補給以外には、他の薬剤、食事の変更はなく、ストレスレベルも同様であった。ビタミンD低値は炎症カスケードの成分(腫瘍壊死因子-αやプロスタグランジンD2など)影響を及ばし、結果、中枢神経系の恒常性睡眠圧が低下し、睡眠リズムを乱し疲労を生じさせることになる。低ビタミンDレベルの補正は睡眠圧を正常に戻すことで疲労が少なくなると考えられる。
光線研究 第648号 令和7年2月1日発行 一般財団法人 光線研究所