一酸化窒素(NO)と可視総合光線療法

一般財団法人光線研究所

研究員      佐藤  仁

所 長 医学博士 黒田 一明

 一酸化窒素(NO)は、窒素(N)と酸素(O)が結合した窒素化合物で、古くから大気汚染の原因物質として知られているため、印象はよくありません。

 ところが、米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部薬理学教授のルイス・J・イグナロ博士らの研究で、「体内で発生する」NOは血管を柔らかくして拡張する物質である」ということが発見され、ルイス博士らは、1998年にこの研究でノーベル医学・生理学賞を受賞しました。

 狭心症発作のときにニトログリセリンを使うことは、よく知られていますが、そのメカニズムはよくわかっていませんでした。それが1990年代になって、ニトログリセリンが血管内に入るとNOが生成され、それが血管を拡張していることがわかりました。その後体内でもNOが産生されていて、体内のNOには色々な働きがあることがわかってきています。

①動脈血管は外膜、中膜、内膜の3つの層で構成されています。NOは中膜にある平滑筋に作用して、平滑筋の緊張をゆるめて血管が広がるように作用します。血管を広げる働きは、放出されるNOの量に作用されるので、NOが不足すると血管は硬くなり、逆に十分出ていると血管を柔らかい状態に保つことができます。

②血小板は傷口の止血には必要ですが、血管壁の炎症やプラーク(コレステロールが蓄積してできた血管のコブ)などで血管壁が損傷すると血小板が集結して血栓を作り、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こすことがあります。NOは、血管壁の炎症やプラークを修復して、血栓ができるのを防ぎ、動脈硬化の進行を抑える作用があります。

③免疫系は、細菌・ウィルス・寄生虫・ガン細胞の増殖を抑えるためにNOを利用しています。

④NOは生殖器への血流を増大させるので、生殖機能でも重要な役割をはたします。(勃起機能不全の治療薬は、このNOのしくみを利用しています。)

⑤脳は長期な記憶を保管したり、検索したりするときにNOを使っています。

⑥NOは胃腸管系の粘膜に流れる血流を正常化させて胃潰瘍の発生を抑制する作用があります。

⑦NOは強力な抗酸化物で、ガン・糖尿病・心臓病・脳卒中を招く抗酸化物質を非活性化します。

◎体内のNOは、主に血管の内側の内皮細胞で産生されます。血流が良くなるとこの内皮細胞が刺激され、NO産生に重要な酵素が働き、NOの合成を促します。

◎NOは、鼻呼吸したときに鼻の周辺の副鼻腔でも産生されます。口呼吸ではNOが産生されませんので、口から吸った空気にはNOは含まれません。この一酸化窒素が肺の血管を拡張して酸素の吸収能力をアップさせています。従って、口呼吸では鼻呼吸に比べて血液中の酸素濃度は低くなります。副鼻腔で産生されるNOには、血管を広げる作用があるだけでなく、気管支拡張作用や鼻腔と副鼻腔粘膜の繊毛運動を促進する効果があることもわかっています。

①血流を良くして内皮細胞を刺激しNOを増加させるのに効果的なのは適度な運動です。ウォーキングやスロージョギング、サイクリング、室内では社交ダンス、水泳などの運動がおすすめです。ただし、激しい運動はかえって内皮細胞の機能を低下させて動脈硬化を進めてしまう恐れがあります。また、喫煙や高血糖なども内皮細胞の障害を引き起こし、NOの産生が減り動脈硬化が進みやすくなるので、注意が必要です。

②鼻呼吸でもNOが産生されるので、日頃鼻呼吸を意識することは大切です。また、ハミングをすると通常の鼻呼吸をしているときと比べて、鼻の中のNO濃度が15倍に上昇したという報告もあります。

③NOは、L-アルギニンというアミノ酸からつくられます。アミノ酸はタンパク質の構成要素です。従って、NOを増やすにはタンパク質が豊富な食品をとることも重要です。

①可視総合光線療法は、血流をよくして、内皮細胞を刺激するため、NOの産生が増えます。

②皮膚が紫外線を浴びると、皮膚細胞内に蓄えられていた窒素酸化物が活性化し、NOを皮膚から血液中に放出することも判っています。光線療法の光線にも太陽光線よりも弱い紫外線が含まれているので、その作用でもNOが増えます。

③鼻炎等で鼻呼吸が出来ない場合、光線療法で鼻炎を改し、鼻呼吸を出来るようにすることで、鼻腔内でのNOの産生が増えます

 体内のNOを増やすには、どのカーボンの組み合わせでも血流が良くなれば効果がありますが、動脈硬化や狭心症、脳梗塞などの病気がある場合は次のように治療すると効果的です。

治療用カーボン:3000-5000番、5002-5002番、1000-5000番などを使用。

治療用カーボン:3002-5000番、1000-3002番などを使用。

照射部位:両足裏部⑦10分間、両足首部①・両膝部②・腹部⑤・腰部⑥(以上集光器使用せず)、後頭部③(1号集光器使用)、左右咽喉部④(2号集光器使用)、各5分間。

※狭心症や心臓弁膜症などの心臓の疾患がある場合は、左肩甲骨下部㊾、肩甲骨間部⑫(以上1号集光器使用)、左乳下部㊿(2号集光器使用)各10分間を適宜追加します。

光線研究 第646号 令和6年10月1日発行 一般財団法人 光線研究所

kiichiro2
  • 船橋市馬込沢で鍼灸院・光線療法院をやってます。
    慢性疾患をよくするためには、
    自己のもつ治癒力を高めることが非常に重要です。
    このブログでは主に光線療法について、
    日光を浴びることの重要性について綴っていきます。

光線の作用免疫太陽光

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です