30年来の褥瘡(床ずれ)が順調に回復
【治験症例 17】
茨城県/55歳・男性・自営業/身長166cm・体重54kg
◆症状の経過
20歳時、仕事中に60kgの米俵を担いだときに、からだをひねって大きくバランスを崩し、転倒した拍子に頚椎を痛めた。すぐに救急車で大学病院に運ばれ、緊急手術を受けたが、頚から下の感覚がなく、からだを動かすことができなくなった。そのまま寝たきりの状態となり、そのため仙骨部に褥瘡性潰瘍(床ずれ)を発症した。何とか自力で起き上がり、歩行器で室内を移動できるようになるまで、1年半もの間、長い入院生活を送った。この間も、褥瘡の部位から出血を繰り返し、さらに傷はどんどん深くなった。その後、本人の驚異的な努力によって、日常生活を何とか行えるようになったが、床ずれの傷は30年間も回復せず、担当医からはたびたび手術を勧められた。しかし、感覚が鈍いせいか、褥瘡の痛みもなく、また認知症の実母の介護もあり、そのために手術は断っていた。
53歳時、転倒して右大腿部を骨折し、人工関節を入れることになった。それ以降、車椅子生活になり、褥瘡の範囲も拡大した。仕事の得意先から光線療法を紹介され、当付属診療所(光線研究所付属診療所)を受診した。
◆光線治療
治療用カーボンは3001-4008番を使用し、両足裏部⑦・腰部⑥各10分間、両足首部①・両膝部②・腹部⑤(以上集光器使用せず)各5分間、褥瘡患部(1号集光器使用)20~30分間照射。
◆治療の経過
治療器を求め、自宅で毎日照射した。治療当初は、褥瘡患部を照射すると滲出液が大量に出てきた。しかし、治療開始10日後から、患部に薄膜ができ始め、滲出液が出なくなった。治療開始3ヵ月後、下肢の血色が良好になり、褥瘡の範囲が縮小して、傷の周囲はきれいな皮膚になった。傷痕はまだ深いが、肉芽の盛り上がりを期待して、現在も光線治療を続けている。
(財)光線研究所「可視総合光線療法・治療報告と症例集」黒田一明著