筋骨格系の光線治療
腰痛も含めた筋骨格系障害に対する可視総合光線療法の主要な作用には、次のようなものがある。
1. 血行改善作用
筋骨格系障害の治療や予防には、運動器官の血行改善が最良である。可視総合光線療法には、熱と光のエネルギー供給によるすぐれた血行改善作用がある。この作用により、炎症を速やかに鎮静化させることができる。
2. ビタミンD産生と骨強化
光線治療により産生されたビタミンDは、腸からのカルシウム溶出(骨吸収)が抑えられ、骨粗鬆症など筋骨格系障害の治療や予防になる。とくに高齢者では、皮下でのビタミンD産生効率の低下、ビタミンDを活性化する肝臓や腎臓の機能低下も見られるため、光線治療はいっそう重要となる。
3. ビタミンDによる変形性膝関節症の進行抑制
ビタミンD摂取量が少ない、あるいは血中ビタミンD濃度が低いと、関節症になりやすいと指摘されている。とくにビタミンD濃度の低下は、関節症を悪化させる要因として強く関係している。したがって、光線治療によってビタミンD産生を促すことは、たとえ関節症になってからであっても、その病態の改善およびビタミンD受容体がある軟骨細胞の損傷防止に充分寄与する。
4. ビタミンDによる筋力強化
古来より、日光浴が筋力強化に有用であることが指摘されてきた。これは筋肉組織にはビタミンD受容体があるためで、ビタミンD不足やカルシウム代謝異常は筋力の低下をもたらすことになる。光線治療によるビタミンD産生やカルシウム代謝の是正は、関節症患者の筋力の強化につながる。
5. 熱エネルギーによる軟骨細胞の再生
最近、適度な温熱効果が軟骨再生を促すという報告があった。光線治療はその深部温熱作用により、損傷された関節軟骨の再生を促すことができる。
6. ビタミンDによるからだの動揺の改善
近年、ドイツにおける研究によれば、ビタミンDにはからだの動揺を少なくする作用が指摘されている。
からだの動揺は、転倒による骨折の原因にもなるため、光線治療によるビタミンDの産生はからだの動揺を減らし、転倒の危険を少なくするので、骨折の予防になる。
7. メラトニンによる脊椎機能の改善
眼から入った光線は視神経を刺激して、脳にある松果体からのメラトニン(神経ホルモン)の分泌を調整する。
近年、メラトニンには、脳幹部を介して筋緊張を調整し、姿勢・平衡・脊椎機能を保つ働きがあると考えられている。一般的に、側弯症患者では、夜間のメラトニン濃度が低いといわれている。
光線療法は異状なメラトニン分泌を是正することで、姿勢平衡・脊椎機能を調節して、側弯症など筋骨格系疾患に有益な作用となることが期待されている。
8. 交感神経緊張状態の改善
筋肉疲労が起こると、交感神経系の緊張により、易疲労(つかれやすさ)、血圧や血糖の上昇、不眠、便秘、不安などの症状を併発することになる。光瀬治療は交感神経系の緊張をやわらげる働きもあるので、これらの症状も改善してくる。
このように、可視総合光線療法は、筋骨格系疾患の病態改善に有用な働きが期待されるが、日常的には患者自身による無理のない、ゆるやかな運動による血行改善とともに、筋力をつける努力をしなければならない。また、日ごろから転倒しないように意識することも重要である。
(財)光線研究所「可視総合光線療法・治療報告と症例集」黒田一明著