糖尿病とビタミンD その1
日光によって皮膚で産生されるビタミンDは、骨だけでなく小腸、肝臓、膵臓、胸腺、副甲状腺、皮膚、生殖器など、ほぼ全身に運ばれて生物学的作用を発揮するため、現在では、細胞のより基本的な機能を調節するホルモンとしてとらえられています。中でも、膵臓から分泌され、血糖を下げるホルモンであるインスリンとビタミンDの関係が注目されています。インスリンは膵臓にあるランゲルハンス島とよばれる組織で産生されますが、このインスリンが不足したり、働きが鈍った状態が糖尿病です。
ビタミンDとインスリンの関係
1980年、アメリカのノーマン博士は、ビタミンDとインスリン分泌の関係を初めて指摘しました。(「VitaminD deficiency inhibits pancreatic secretion of insulin」Norman AM.et al.Science.209巻:vol209.823-5.1980)。
彼らの研究は動物実験ですが、ビタミンDが欠乏したラットにおけるインスリン分泌の低下は、ビタミンDを3日間補うことによって回復することが報告されました。この報告を機会に、インスリンとビタミンDの関係が盛んに研究されるようになりました。その結果、ビタミンDは、ビタミンD欠乏動物においても正常動物においても、インスリン分泌を促進することが明らかになりました。
また、人のビタミンD欠乏症でも、※経口ブドウ糖負荷試験にインスリン反応が、ビタミンDの投与によって、健常者と同様のインスリン反応になることが示されました。さらに軽症糖尿病患者においても、ビタミンDを投与するとインスリン反応が亢進することが認められています。
一方、インスリン分泌は、血中のカルシウムによっても調節されています。ビタミンDは、カルシウムを増加させる働きがあるので、ビタミンDによるインスリン分泌作用は、ビタミンDがカルシウムを増加させたことによる二次的な現象である可能性があります。
※ 経口ブドウ糖負荷試験 :10時間以上絶食後、空腹のまま採血し、血糖値を測定。ブドウ糖(75g)を溶かした水を飲み、30分、1時間、2時間後に採血し、血糖値を測定する。
(Ⅰ)ビタミンD欠乏状態では、血中カルシウムが減少し、膵臓のランゲルハンス島(膵島)内のカルシウムも減少し、インスリン分泌は減少します。
(Ⅱ)ビタミンD欠乏状態では、ビタミンDのランゲルハンス島への作用が弱まり、インスリン分泌は減少します。逆にビタミンDやカルシウムを補うと(Ⅰ)、(Ⅱ)の経路を介して、インスリンの分泌は増加することになります。このようにインスリン分泌の一部は、ビタミンDとカルシウムの共同作業によって調節されていると考えられています。
(財)光線研究所「可視総合光線療法・理論と治験」黒田一明著