難聴とビタミンD
難聴患者では血中のビタミンD濃度が低いという、光線療法の観点からたいへん興味深い報告が英国や日本の耳鼻科医によって報告されています。英国の研究では、血中のビタミンD濃度を測定した難聴患者(年齢21~53歳)10人すべてが正常値以下であり、また難聴に対してビタミンD、カルシウムの薬剤投与が可能であった4人中2人は聴力が改善したことが報告されています。日本の研究では、難聴障害(年齢6~78歳)28人中23人(82%)に血中ビタミンD濃度の低下がみられたことが報告されています。これらの研究は、ビタミンD不足は聴力にも影響を及ぼす可能性を示唆しています。
ビタミンD不足にともなうからだのさまざまな障害は、カルシウム代謝異常を介して細胞や器官の機能異常を起こし、高血圧症、糖尿病、動脈硬化症などの生活習慣病を進行させる結果となります。同様に難聴患者におけるビタミンD不足は、カルシウム代謝異常を介して聴力に関係する内耳のリンパ液、感覚細胞、聴神経などの各細胞や組織に影響を与えて聴力を障害すると考えられます。さらに、老人性の難聴では動脈硬化による聴覚障害の循環障害の影響も加わります。高齢者における難聴という障害は、孤立感、疎外感を強く抱かせ、社会生活だけでなく家庭生活においても不適応を起こしやすい心理状態になります。言語によるコミュニケーション手段が失われた精神的苦痛は想像以上に大きいといえます。
特に高齢者の難聴では難聴以外に生活習慣病も伴うことが多いので、これらに対する光線治療も同時に行います。
(財)光線研究所「可視総合光線療法・理論と治験」黒田一明著