光線治療器複数使用の大きなメリット
光線治療は単なる温熱治療ではありません。光と熱のエネルギーをからだに導入し、エネルギー不足を補い、これにより、抗病力(自然治癒力)を強化し、種々の異常(症状)を改善する治療法です。
光線治療器を複数台使用することのメリットは、治療効果が上がる、時間が短くて済む、などのことが挙げられます。可視総合光線療法は、継続していくうちに全身が温まり心身ともに十分リラックスした状態になります。ところが、幼児や高齢者、手術直後の体力低下が著しい人、さらには更年期障害や自律神経失調症に代表されるホルモン調節や神経調節がうまくいかない疾患にかかっている人の場合は、からだの冷えが非常に強く、光線照射が終わった部位がまたすぐに冷えてしまい、十分にからだ全体が温まらず、期待したほどの血液循環がみられないことがあります。
冷えによる血流不全で病気の治りが悪くなり、冷えによって熟睡を妨げられることが治癒を遅らせます。体温を高く保つことは病気回復のためにはとても重要です。光線治療器1台では末梢血液循環を十分改善し維持することはなかなか難しいため、複数台の使用が望まれます。
光線治療器の複数台の使用は時間の短縮になるだけでなく、治療後に体が冷えにくくなります。
例えば1台で足5分、腰5分、合計10分照射したときと、足と腰を同時に5分照射した場合、総照射量は同じですが、治療後の体温の低下は、足と腰を同時に5分照射したときの方が緩やかなものとなり、これにより高い治療効果が望めます。
🌞実験
◎実験内容
1台で⑦両足裏部、①両足首部、②両膝部の順に各5分間照射した場合と3台で同時に同部位を照射した場合の母趾(足の親指)と足底中央の深部温度と表面温度の変化を計測。
★母趾深部温度
・1台で照射した場合
安静時は32℃。5分間で34.3℃まで上昇。しかし①両足首部、②両膝部照射中に33.4に低下。
以後も低下を続け、照射終了後15分間で照射前の温度に戻る。
32.0℃ → 34.3℃ → 32.0℃
・3台で照射した場合
安静時は32℃。5分間で37.5℃まで上昇。
以後深部温度は、照射終了後20分間を経過しても測定前のより高い温度(32.6℃)を維持した。
32.0℃ → 375℃ → 32.6℃
★足底中央深部温度
・1台で照射した場合
32.8℃ → 34.1℃ → 32.8℃(20分間で戻る)
・3台で照射した場合
32.8℃ → 34.5℃ → 33.6℃(20分間経っても戻らない)
★母趾表面温度
・1台照射の場合は+2.5℃ (10分間で測定前の温度に戻る)
・3台照射の場合は+3.8℃ (20分間経過しても測定前の値には下がらなかった)
★足底中央表面温度
・1台照射の場合は+3.9℃ (10分間で測定前の温度に戻る)
・3台照射の場合は+5.8℃(20分経過しても測定前の値には下がらなかった)
🌞複数台照射は効率的で効果も持続できる
実験結果を比較対象すると、3台照射の場合、照射時間が1台照射の3分の1であるにもかかわらず、深部温度・表面温度ともに高温を示しており、熱エネルギーの補給にはより効率的であることがわかります。また、1台照射では10~20間経過しても深部温、表面温度とも照射前より高い状態を維持していつまでもからだが温かく、効果の持続時間が長いことが確認できます。
自宅で治療する場合では、治療院や診療所での治療ほど効果が実感できないことが、しばしばあります。これは、おそらく自宅治療と診療所の治療では、次のような違いがあるからです。
一つは、治療院や診療所では専門のスタッフが正しい部位に的確に照射するのに対して、自宅ではそれが難しく、これでいいのだろうかと不安をもちながらの照射治療が多いことがあげられます。どのような治療でも、不安感や不信感を抱いたままでは、十分な治療効果をあげることは困難です。
もう一つの大きな違いは、治療院や診療所では多くの治療器が利用でき、多方向からの同時照射治療が可能な点です。多方向からの同時照射は、末梢温をすばやく上昇させるとともに深部まで十分に温熱効果を到達させ、血液循環を良好にし、治療効果を持続させます。これらの違いは、強度の冷えの場合ほどはっきり現れます。
🌞複数台使用の治療効果
以上のことから、可視総合光線療法を行うにあたり、光線治療器を複数台使用することで次のような治療効果があることがわかります。
(1)血液循環の改善効果が顕著です。したがって、末梢血液循環が悪い例(冷え症、自律神経失調など)に有効です。
(2)治療時間が短くなります。脳卒中後のまひや腰痛などで同じ姿勢をとるのがつらい場合などに有効です。
(3)多くの部位が同時に治療できます。したがって、アトピー性皮膚炎など全身症状の出る疾患や多くの関節が同時に痛む慢性関節リウマチなどに有効です。
(4)症状の強いところに集中的に照射治療できます。したがって、ガン性の疼痛や捻挫などのけがをした直後の治療、五十肩の痛みなど長時間照射が必要な場合に有効です。
🌞家庭で1台で治療するときのポイント
治療院で行った治療効果を下げないために、自宅でも光線治療が行うとさらなる効果が望めます。その際のポイントは以下の通りです。
1.照射時間を十分にとる。とくに下肢の冷えが強い場合には、足裏が十分に温まったと実感できるまで照射する。その際、陽性反応に対する注意が必要です。
2.保温にここがける。照射の終わった部位は、衣服や毛布などをかけて体温の低下を防ぎます。
3.室温を高くする。室温が低いと、末梢温度の低下を招きやすくなります。
【治験例】
■治療器を2台に変更した治験
◆25歳/女性
◆症状の経過:10年前から冷え症に悩まされ、両足首から先が特に冷たく、夏でも靴下を履かないと眠れなかった。寝付きが悪く、熟睡できなかった。腰痛、肩背部痛も強く、こりのために吐き気もしばしばみられた。胃下垂があり、下痢、便秘を繰り返し、生理不順、生理痛も強かった。知人の紹介で当診療所(光線研究所付属診療所)を受診した。
◆光線治療:3001-4008番の治療用カーボンを使用し、両足裏部、腰部各10分間、両足首部、両膝部各5分間(以上集光器使用せず)、左右下腹部、背正中部、肩甲骨間部各5分間、頚椎下部10分間(以上1号集光器使用)照射。計60分間の治療を自宅で行った。
◆治療経過:治療2ヵ月の間に腰痛、生理痛が多少軽減したが、期待したほどの効果があがあらなかったので、治療器を2台にした。両足裏部各10分間、両足裏部、両膝部各10分間、腰部、右下腹部各5分間、腰部、左下腹部各5分間、背正中部、頚椎下部各10分間計40分間治療した。治療器を2台にして1ヵ月たった頃から、冷え症や諸症状が改善され、食欲が出て熟睡できるようになり、気持ちに張りがでてきた。足裏部の深部体温を比べると、初診時24.0℃、2ヵ月後26.5℃、3ヵ月後31.3出℃であった。体温の変化をみても冷えの改善は明らかである。
(財)光線研究所 (「可視総合光線療法・理論と治験」黒田一明著)