創傷と可視総合光線療法

-褥瘡及び開放性脱臼についてー

 一般財団法人 光線研究所 研究員 新井 悠介

 医師ヒポクラテスが「日光の光と熱は全ての創傷、殊に開放骨折、破傷風に効果がある」との言葉を遺しました。太古より太陽の光と熱が外傷、化膿、火傷、潰瘍などの傷の治りをよくすると指摘されてきました。可視総合光線療法も90年以上の治療実績が示すように、創傷治癒を促す優れた効果があります。今回は、褥瘡(床ずれ)と開放性脱臼に伴う創傷の症例を紹介します。

■褥瘡

 褥瘡は布団やベッドなどと触れる部分の皮膚が、長い間圧迫され続けることで血流が悪化し、皮膚や筋肉などの組織が壊死する状態で、床ずれともいいます。骨の出っ張りがある身体部位(仙骨部、踵、臀部、肘など)に多くみられます。脳卒中や脊髄損傷、また術後などで寝たきり状態や車椅子での生活を行っている場合に誘発されやすくなります。その他、栄養状態の問題や神経障害・血流障害を起こしやすい糖尿病では褥瘡の発生に注意が必要です。本症は予防が大切で、頻回な体位変換による除圧やスキンケア、十分な栄養摂取などが重要です。

■開放性脱臼

 開放性脱臼とは関節が脱臼した際に関節を覆う皮膚が破れ、皮膚の外に関節面が飛び出し外部に露出している症状のことを言います。かなり強い捻じれの力や外力が関節に加わることによって、開放性脱臼を起こします。損傷される組織は皮膚や靭帯だけでなく、血管や神経、腱組織まで及ぶことがあります。

 感染症のリスクが高まり、筋膜組織に細菌感染すると壊死性筋膜炎という病気を引き起こす原因となり切断する場合もあります。

 閉鎖性脱臼と比べて症状が重く、早い治療が必要です。激しいスポーツの時やスポーツの時や回転工具を操作時につけていた軍手が巻き込まれた時などにも起こることがあります。治療は徹底的な洗浄・消毒と丁寧な整復によりますが、整復が難しければ手術が必要です。

■可視総合光線療法

 光線療法の優れた血行改善作用は、体力を強化し、免疫反応を促進して患部の炎症物質や老廃物を速やかに除去し、創傷部の治癒を促します。組織再生には可視光線、特に赤色光が線維芽細胞増殖を促して肉芽形成に寄与します。また、日々の照射による鎮痛効果は、睡眠の質にも寄与し夜間活発になる上皮の再生を促します。さらに微量に含まれる紫外線は殺菌効果を発揮し、治癒を遅らせる感染症の予防になります。

 褥瘡では、糖尿病など基礎疾患がある場合は、それらに対する光線療法を行ったうえで患部照射を行います。

 開放性脱臼では、創傷治療と共に治癒後は脱臼で所外された関節の動きを円滑にするなど、リハビリのサポートにも活用できます。光線療法は、整復後、止血し病院治療で感染症のリスクを回避した状態で利用します。

 血行促進作用の強い光線療法は治癒を促す大変すぐれた治療法になります。

◆治療用カーボン

 3001-5000番、3001-4008番、3001-3002番、4001-4008番、1000-3001番、1000-4001番などを使用。

◆照射部位及び照射時間

 両足裏部⑦・両足首部①・両膝部②・腹部⑤・腰部⑥(以上集光器使用せず)、患部は痛む範囲に合わせ1号または2号集光器を使用。照射時間は、患部15~20分間。その他の部位各5~10分間。

『光線研究 第634号』令和4年10月1日発行 一般社団法人 光線研究所

馬込沢うえだ鍼灸院

kiichiro2
  • 船橋市馬込沢で鍼灸院・光線療法院をやってます。
    慢性疾患をよくするためには、
    自己のもつ治癒力を高めることが非常に重要です。
    このブログでは主に光線療法について、
    日光を浴びることの重要性について綴っていきます。

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