糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症が改善
【治験症例 8】
糖尿病
73歳・女性・主婦/身長145cm・体重41kg
◆症状の経過
50歳ごろ、だるさが強くなり、内科を受診して糖尿病と診断された。自覚症状はなく、当時ひとりで洋品店の切り盛りをしていたので、何の治療もせず放置した。
65歳時、風邪を引いて突然昏睡状態になり、4日間意識不明になった。糖尿病性の無自覚性低血糖であった。血圧は180/100mmHgと高血圧であり、左眼は糖尿病性網膜症、右眼は白内障で見えにくい状態であった。そのまま2ヵ月間入院し、退院時は血糖値150mg/dl、HbA1c7.5%、血圧150/80mmHg前後であった。
70歳時、糖尿病から動脈硬化が進み、脳梗塞で1ヵ月間入院した。後遺症は残らなかったが、その後、インスリンを朝晩自己注射することとなった。最近下肢のしびれを感じるようになり、10年来ある右下腿の湿疹もかゆみが強くなった。
◆光線治療
治療用カーボンは3001-4008番を使用し、両足裏部⑦・両足首部①・両膝部②背正中部㉘各10分間、腹部⑤・腰部⑥・後頭部③各5分間、照射。湿疹には、治療用カーボン3000-3002番に変更し、右下腿の湿疹患部を10分間照射。⑦①②⑤⑥は集光器使用せず、㉘③右下腿(患部)は1号集光器使用。
◆治療の経過
自宅で毎日光線治療を行った。3日目には、下肢のしびれがなくなった。治療2ヵ月めには、腕時計の文字盤の数字がはっきりわかるほど、眼の見えがよくなった。右下腿の湿疹は、光線治療で色が薄くなり、かゆみも少なくなり、3ヵ月目には湿疹はきれいになった。湿疹が気になり、夏でもはけなかったスカートがはけるようになった。治療4ヵ月目には、テレビの音量をこれまでより5段階下げてもよく聞こえるようになった。6ヵ月目には、降圧剤を服用しても下がらなった血圧が正常範囲に入るようになった。
現在、治療開始1年を経過したが、足指でジャンケンができるくらい、感覚、動きともに良好である。最近では補聴器なしでも会話が可能になっている。
◆コメント
糖尿病でいちばん多い合併症が、糖尿病性神経障害である。末梢神経には、痛みを感じる感覚神経、筋肉を動かす運動神経、心臓や胃腸の働きを整え、血圧や体温をコントロールする自律神経の3つがある。糖尿病による神経障害はからだ全体に悪影響を及ぼし、進行すると深刻な状態になる。
糖尿病による神経麻痺や壊疽は、神経そのものの麻痺で、痛覚、冷熱感が失われ、怪我ややけどに気づかずに悪化し、とくに足は壊疽になりやすく、障害の程度によっては壊疽部分を切断しなければならない場合もある。
光線照射により産生されるビタミンDは、カルシウム代謝を介して膵臓に働きかけ、インスリンの分泌を促進する。また、神経障害に対しては、可視総合光線の温熱作用で全身の血行を改善して、細胞が必要とする酸素や栄養を供給することが、糖尿病に対する基本的な治療となる。
その結果、感覚神経や運動神経の異常がおこりにくくなり、手足のしびれや違和感が軽減される。充分な血液を全身の筋肉組織に供給することで冷え症を改善し、また筋肉をやわらかく保つことで、神経や筋肉の機能障害を防ぎ、各種運動療法を行いやすい環境を作り出す。このように全身状態が改善されると、自律神経障害の諸症状は軽減される。
しかし、糖尿病の血糖コントロールには、何よりも食事・運動療法が不可欠で、これをしっかり行わない限り、光線療法も十分な効果を上げることはできない。
本治験例は糖尿病性神経障害(無自覚性低血糖)によるしびれ、湿疹(かゆみ、発赤)などの症状が軽減され、視力も改善、血圧が正常範囲に入るなど、良好な状態である。
(財)光線研究所「可視総合光線療法・治療報告と症例集」黒田一明著