胃の不調と可視総合光線療法 1

 胃下垂・ダンピング症候群

 一般財団法人 研究員 新井 悠介

 古代ギリシャの医師が「日光は内臓の分泌作用を高め、発汗を促し、筋肉を強くし、脂肪の蓄積を防ぎ、腫瘍を縮小し、浮腫を減ずる」との言葉を遺しています。太古より日光浴は、代謝を促し消化吸収する力を高めて人の健康に清すると考えられていました。可視総合光線療法でも同様の作用を期待できることが当所(光線研究所付属診療所)の臨床治療で分かってきています。今回は、消化作用を担う胃の不調に関わる症例、胃下垂及びダンピング症候群の症例を紹介します。

■胃下垂

 胃下垂は、胃が正常な位置よりも垂れ下がっている状態です。重症になると骨盤の位置まで落ち込むこともあります。複数の腹部症状を訴える場合や無症状の場合もあり、特有の症状のないことから、西洋医学では病気として扱われないこともあります。臨床上は胃壁の筋肉の緊張が低下し、胃の働きが鈍くなる状態(胃アトニー)を伴って、腹部膨満感や腹痛などの複数の症状を訴えることがあり、この場合は治療対象となり、胃を支える筋肉や脂肪の少ない瘦せ型で長身の人がなりやすいといわれます。胃下垂による腹壁の緊張の変化、痩せ過ぎによる腸壁の脂肪不足、腹圧低下など、複合的な要因で起こると考えられます。普段より食べ過ぎた時、過労、不安などによるストレスや腹部の手術、出産などを繰り返した時、また、急速な体重減少などが関連しているとする説もあります(大阪府済生会野江病院ホームページより)

■ダンピング症候群

 本症候群は、胃切除後遺症の一つで、胃切除後の人の約3割に発症します。食事中や食後約30分以内に起こる症状を早期ダンピング症候群とよびます。腹痛や下痢、腹部の張り、吐き気や嘔吐、顔面の紅潮、心拍数の増加、発汗などの症状が生じます。原因は、胃を切除したことで食べ物が一時的に溜めておくことができなくなり、食物が急速に小腸内に吸い取られて起こります。また、食後2~3時間後に起こる症状を晩期ダンピング症候群とよび、冷や汗や動悸、倦怠感、めまいなどが生じます。原因は、食物が小腸に移動し、短時間で吸収されるため、一時的に高血糖状態となり、この状態に反応して多量のインスリンが分泌され低血糖になるためです。

 ダンピング症候群の対策には、食事はよく噛む、少量を時間をかけて食べる、間食の活用、食事中の水分摂取量を減らすなどです。

■可視総合光線療法

 光線療法は、光と熱エネルギーで体を温めて血行を良好にし、細胞の新陳代謝を促して、消化吸収力を高めてます。また、心地よい光線療法の刺激は、自律神経系の働きを高め、消化管ホルモンや消化器の働きを活性化し、胃の不調改善に寄与します。加えて光線療法の継続は、冷えの改善や人体でのビタミンD産生を高めることにもつながり、胃を含めた消化器全体の免疫強化にも結びつきます。これらの作用により胃下垂による不調やダンピング症候群の改善及び病状の経過を安定させることが期待できます。

◆治療用カーボン:3001-4008番。痛みが強い場合は1000-3001番を使用。胃腸強化を目的とする場合は、3000-5000番、症状が重いときは1000-5002番を使用。

◆照射部位及び照射時間:両足裏部⑦・両足首部①・両膝部②・腰部⑥(以下集光器使用せず)。胃部⑪・背正中部㉘・肩甲間部⑫・後頭部③(以下1号集光器使用)。⑦10分間、その他部位各5~10分間照射。

※特に、胃下垂の光線治療初期には、腹部への照射を避けます。本症が血液循環不全により腹部に血液がうっ滞していることが一因です。この様な時に光線照射をすると動悸、めまいなど陽性反応で治療継続に支障を起こすことが考えられます。軽症例での多くでは問題ありませんが、念のため治療初期に腹部照射は、控えるか5分以内にとどめます。

◆治療の経過:当所(光線研究所付属診療所)では、胃腸を強化するのに光線治療が有効であることを説明した。光線治療に俄然やる気を出し、毎日自宅で光線治療を継続。治療1ヵ月後には、食後の腹部膨満感や苦しさが軽減した。しかし、食べられる量はまだ変わらず、体重も増える気配はなかった。諦めずに光線治療を継続し、3ヵ月後には、空腹感が生じ、食事量も少しずつ増え、美味しく食べられるようになった。体重もようやく2kg程増えた。この調子を維持するため、光線治療を日課としている。

光線研究 第643号 令和6年4月1日発行 一般財団法人 光線研究所

kiichiro2
  • 船橋市馬込沢で鍼灸院・光線療法院をやってます。
    慢性疾患をよくするためには、
    自己のもつ治癒力を高めることが非常に重要です。
    このブログでは主に光線療法について、
    日光を浴びることの重要性について綴っていきます。

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